田中良さんに杉並区の「お金」の話を聞いてみた。


杉並区長として、田中さんの財政についての考えをお聞かせ下さい。

まず、お伝えしたいのは、私は、区政運営の最大の目的は「区民福祉の向上」であると考えています。これは、区長としての私の政治信条でもあります。高齢者、障がい者、低所得者、子ども・子育て、教育等、多岐にわたる福祉を充実させ、区民の皆様の生活を守っていくことが区長の責務と自覚しています。しかし、極あたりまえのことですが、区に将来にわたって安定して使えるお金がなければ、「福祉の向上」を実現することは出来ません。そして、それは「持続可能」でなければならないのです。そういう意味でも、財政を健全な状態に保つことは大切であると考えます。しかし、財政状況を気にするあまり、区民福祉がおろそかになっては、本末転倒です。


「福祉が優先」、よくわかりました。その上で、杉並区の財政はいまどういう状況でしょうか?

自治体の財政の仕組みは複雑で、一つの指標や数値だけで判断することはできませんが、例えば、私の任期中は決算で赤字に転落したことは一度もありませんし、緊急時の区の蓄えであり、家計に例えると普通預金にあたる財政調整基金も、この10年間で2倍以上の484億円(※1) 円まで積み増し、23区中2位の残高です。そういう意味では、杉並区の財政は健全であると言えるでしょう。また、杉並区では、議会とも協議し、区財政を多面的にとらえ、持続可能性を確保するための仕組みを作りました。今だけではなく、将来も見据えた財政運営の仕組みです。これらから見ても、健全性が担保されています。


具体的にはどのような仕組みですか?

少し専門的になりますが、①大規模災害や経済事情の著しい変動等による減収に備えるため、一定額の貯金を確保しておく。②将来の区立施設の改築・改修需要に備え、毎年計画的に積み立てを行う。③区債の発行が過度にならないよう歯止めとなる指標を設ける。④行政コストが税収等でカバー出来ているか判断する指標を設ける。⑤区債(借金)を黒字資金で返済するのに何年かかるか、目標となる年数を明らかにする。という5つの視点です。これは、「単年度の収支均衡・中長期的な財政の健全性」、「現金主義・発生主義」という視点を網羅したもので、それぞれに設定した管理指標に目配せをしながら財政運営を行っています。(下イメージ図参照)
イメージ図


「いざ」という時の対応は大丈夫でしょうか?

杉並区では、今般のコロナ禍において、2年間合計で106億円の財政調整基金を活用することで、機動的な対策を行うことができました。その一つが、区独自の、区内4基幹病院に対する包括補助金(※2)です。2年前の春先、区内でもコロナの感染が急激に広まり、区内医療機関は「医療崩壊」の危機に直面しました。病院は、コロナ患者を受け入れることで人員が割かれ、また経費が大幅に増大、逆に一般患者を受け入れられないため、結果的に経営難に陥るという事態に直面しました。未曾有の難局でしたが、当時、国や都のコロナ対策としての補助スキームは明確になっておらず、いつ、どれだけの支援があるかも全くわからない状況でした。そこへ、杉並区が財政支援を素早く行ったことで、4病院は収入減やキャッシュフローの問題の解消が図られ、憂いなくコロナと戦っていただきました。こうした対応は、基金の着実な積立など区が先に述べた方針に基づく健全財政を維持してきたからこそ可能だったのです。


よくわかりました。安心して、田中さんに杉並区政の舵取りを任せられます。ご健闘をお祈りします。

これからも、「区民福祉の向上」と「持続可能な財政」の実現めざしてがんばっていきたいと思います。


※1:令和4年度1号補正計上時点での残高は484億2867万円。

※2 :「入院・外来医療体制強化事業補助金」予算額22億2900万円、支払額16億3005万円。